2001年、プーチン政権は「2002年から2006年までの軍需産業部門における発展」についての連邦特定目的プログラムを承認し、ソ連から引き継いだおよそ1700の軍需産業を70の持ち株会社(ホールディング)へ統合する計画を立てた。
しかし伝統的に、ソ連/ロシアでは、経済政策は政府(首相)の専管事項であって、外交や国防を担当する党/政権(書記長/大統領)からの介入を嫌う。この場合もフラトコフ首相の抵抗によって統合計画は進捗しなかったが、2006年に軍需産業を横断的に監督する軍需産業委員会(VPK)が設立されたことで、ようやく統合計画が動き出すことになる。
これは、ゴルバチョフがそれまで共産党が独占していた軍需産業への管轄権を、VPKの設立によって政府側へ移管したのと逆のプロセスと言えよう(従ってソ連/ロシアの歴史上、VPKという名の組織は二度存在したことになる。そのプロセスは逆であったが、どちらも軍需産業を政治的にコントロールしようとしたときにこの組織が現われたことには変わりない)。
こうして航空機では統合航空機製造会社(OAK)、造船では統合造船会社(OSK)、防空システムは「アルマズ=アンテイ」、ヘリコプターは「ロスヴェルトロート」、戦車は「ウラルヴァゴンザヴォード」といった具合に、各カテゴリー別の統合が2006年以降、次々と実現していった。
そこで現在、俎上に上りつつあるのが、エンジンや電子機器といったコンポーネント・メーカーの統合である。直近に実現しそうなのが航空機用エンジンで、まずは現在40ほどある大小のメーカーを4つの系列に統合することを目指すという(図参照)。

ここで興味深いのが「サリュート」系列で、元は開発・設計能力を持たないエンジン工場でありながらSu-27用AL-31Fエンジンの生産で実力をつけ、独自の設計局を立ち上げている。先日初飛行したSu-35のエンジンである「117S」や、AL-31F-M1/2/3などは全てサリュートが独力でAL-31Fから発展させたものだ。
一方、AL-31Fシリーズを開発した本家であるサトルゥンは国営武器輸出公社「ロスオボロンエクスポルト」系列の総合軍需企業「オボロンプロム」の傘下で独自のエンジン・ホールディングを形成している。同社はやはりPAK-FA用にAL-31Fから発展したAL-41F-1Aを開発中で、サリュートとはライバル関係にある。
このほか、MAPOミグ傘下にはRD-33の生産で有名なクリモフが、爆撃機用大型エンジン設計用にNKグループ(中核はツポレフの爆撃機用エンジンで経験の深いクズネツォフ)がそれぞれ独自のホールディングを形成している。
ロシア政府はいずれ、これらをひとつのエンジン開発生産ホールディングとして統合したい模様だが、OAKの急速な統合でかなり苦労したらしく、当面は段階的に統合を進めていく方針の模様だ。
それにしても気になるのは、AL-31F-Mシリーズ、AL-41Fシリーズ、RD-33シリーズが、いずれもソ連時代に設計されたエンジンの大幅改設計型に留まっていることだ。おそらくは90年代を通じて完全な新規設計エンジンを開発すること資金が不足していたためと思われるが、「栄」を18気筒化した「誉」で苦労した日本海軍の経験がふと頭をよぎる。
今後、アメリカや欧州、場合によっては中国とも渡り合っていくためには、このままではそう遠くない将来に冗長性の限界が来てしまうのではないだろうか?
基礎開発力の差というのはこういうところに出るのだよなぁ・・・